エンジンルームの整備をしていると、どうしてもボルトをソケットにはめた状態でネジ穴に入れるという作業が出てきます。
筆者が働いていた某ディーラーでは、サービスキャンペーンと称してカムポジションセンサーの交換を頻繁におこなっていました。(分かる人はこれだけでどこのディーラーか分かりますね)
エンジンの裏側、しかもオルタネーターの上部についていたカムポジションセンサーを固定している10mmのボルトなんかがまさにその典型です。
頭を突っ込んで見れない場所なので、手探りでボルト穴を見つけて手締めをして本締め。
慣れれば難しい作業ではないのですが、未熟だった頃はしょっちゅうボルトを落としては探す行為に時間を取られていました。
そんなアクシデントが発生するリスクを劇的に減らしてくれる工具があります。
それがKo-kenのナットグリップソケット。

もはやコーケンの代名詞とも言うべき人気工具です。
ではでは解説していきます。
ボルト・ナットが落ちない仕組み
まずは、どのようにしてソケットがボルト・ナットを掴むのか。そのギミックを説明していきます。

上の画像の通り、ソケット内側に金属製のボールが設けられています。
このボールが2面からボルト・ナットを押し込みます。

ボールを押し込むのは、ソケット外部についているスプリング。これがまた強すぎず弱すぎない絶妙なトルクでボールを内側に押し込んでくれているんですね。

で、実際にこんな感じでソケットがボルトをしっかり保持してくれているのです。
コーケンの1/4ナットグリップソケットセットの内容

今回筆者が購入したのは1/4サイズのソケットセットです。
以前紹介したコーケンのシブイチラチェットを購入した際に一緒に買いました。
セット内容は以下の通り。
- 8mm
- 10mm
- 12mm
- 13mm
- 14mm
シブイチで作業するのであれば十分なセット内容でしょう。めったに使わないけど6mmもあれば嬉しいかな。
各種実測データ
ではでは、セット内容の各サイズのソケットを筆者が実際に測定したデータを公表していきます。
筆者のノギスが安物のため多少の誤差はあると思いますが、参考値としてならまあ使えるデータかなと。
8mmソケット
全長・直径・重量

8mmソケットの全長は18.1mm。
確かスナップオンのシブイチソケットはもう少し短かった記憶があります。値段と性能、ギミックを考えれば十分すぎるほどコンパクトです。

直径は12.3mm。
ナットグリップのギミックを含む都合上、薄肉化は厳しそうですね。

重量は10g。
十分に軽量な部類と言えるでしょう。
10mmソケット
全長・直径・重量

一番使用頻度が高いであろう10mmソケットの全長は19.1mm。
20mmを切っているってだけで十分すごいと思います。その上ナットグリップっていうね。

直径は14.4mm。
ノーマルのソケットとそんなに変わらないサイズでグリップしてくれるっていう点が素晴らしい。

重さも12gと軽量。Z-EALのスタンダードラチェットと合わせても100g以下です。
12mmソケット
全長・直径・重量

12mmソケットの全長は20mmちょうどでした。

直径は16.6mm。
勝手な推測ですが、このくらいのサイズになってくるとボルトグリップ用のトルクが大きくなってくるので直径も増えてくるのかな。などと。

重さは20g。
12mmのソケットあたりから、手に持ったときに重さを感じるようになってきます。
13mmソケット
全長・直径・重量

建設機械の整備ではよく使う13mmソケット。全長は20.9mmでした。
筆者は北越工業の機械を触ることが多いんですが、基本的に自動車で12mmのボルトを使うような箇所は全部13mmです。

直径は18.1mm。急にでかくなった感がありますね。

重量も24gと増量。
なんとなく会社で普段使っている3/8ソケット(KTC製)の重量を測ってみたところ、43gでした。深い意味はありません。
14mmソケット
全長・直径・重量

シブイチで扱える最大サイズ、14mmソケットの全長は22.1mmでした。

直径は19.8mm。20mmいってないのがほんとに凄い。

重さは31gでした。さすがに30gを超えるとちょっとズッシリ感じますね。
ナットグリップソケットの素晴らしいところ
ボルト・ナットが落下するリスクを著しく減らす
整備士なら分かってくれると思うのですが、エンジンルームにボルトを落としたりすると結構ガチで絶望します。
アンダーカバーの上に落ちてくれれば神に感謝するレベル、ひどいと落としたボルトを探すだけで1~2時間かかったりもします。シリンダブロックとオルタネーターの間に落ちたりしたこともあったなあ…。
そんな感じで、ボルトの落下というのは作業効率を著しく低下させる要因の一つなんですね。
ソケットがボルトを掴んでくれることで、ボルトを落としてしまうリスクが8割くらい減ります。
一見地味ですけど、これってメカニックにとっては滅茶苦茶嬉しいことなんです。
アルミ製のボルト・ナットも保持できる
マグネットソケットという工具もありまして、ボルトナットの保持という点ではなかなか優れた工具です。
その名の通り磁石の力でボルトを保持するんですが、アルミやステンレスのボルトナットは磁石でくっつかないんですよね。
近年の車はアルミ製パーツが多いですし、マグネットで対応できない部分までソケット側で対応出来るというのは大きなメリット。
ナットグリップソケットの残念なところ
ナットをホールドすると取り外しにくい

ボルトはまだいいんです。ナットをソケットにはめ込んでしまうと、手だけでは外せなくなります。
作業するときにきちんと気をつければ済む話ではありますが、うっかり別のナットをはめ込んでしまうと外すのが面倒。
作業のテンポは若干落ちる
ソケット側でボルト・ナットをグリップするという仕様上仕方ないんですが、特にグリップを必要としない場面で使ってしまうと作業効率は落ちます。
このナットグリップソケットをメインのソケットにするというのはあまりおすすめできません(できなくはないけど)。
あくまでボルト・ナットを落としたくない作業をするときに使うサブ的な立場の工具になります。
工具箱に入っているといざってときに心強いソケット

では最後に総括します。
- エンジンルームにボルトを落とすリスクが極端に減る
- スタンダードのソケットとそこまで変わらないサイズ感
- 強すぎず弱すぎない絶妙なトルクでボルトをホールド
- 普段使い用のソケットには向かない
- ナットをはめ込むと取り外すのが面倒
普段からメインのソケットとして使うのは正直厳しいですが、奥まった狭い箇所の作業をするときに持っていると最高に心強い工具です。
筆者はシブイチラチェットに長いエクステンションをつけて作業することが多いので、もはや必須に近いレベル。
インパネを全バラするような作業をすることが多い人は、持っているだけでかなり効率が変わるのでおすすめです。
ではまた。
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